連載企画 > 特別編 第3回
連載企画「ITエンジニアの君たちはどう生きるか」
特別編 第3回 デフエンジニアからみる世界、そして未来に叶えたいこと

2019年4月19日

聴覚障がいを持つITエンジニア、「デフITエンジニア」の生き方を紹介する本連載。
最終回となる今回は、デフITエンジニアの可能性と未来について、小島と有馬、それぞれの想いを語ってもらった。

デフエンジニアの可能性

――これまで、聴覚障がい者を取り巻く環境の問題などについて、お話し頂きました。ここからは、デフITエンジニアの可能性について、お尋ねしたいと思います。

有馬:現在、エンジニアは人手不足です。「プログラミングは難しそう」というイメージがあると思うのですが、聴覚障がい者とエンジニアは凄くマッチすると思っています。
何かを失うと他の何かの能力が研ぎ澄まされるということがあると思うのですが、聴覚障がい者の方たちは、聴こえない分、自分の世界に集中した時の集中力が凄く高いと感じています。
プログラミングは、割と聴覚障がい者の集中力が向く分野で、良いデフITエンジニアがもっと生まれてもいいのではないかなと思います。

――――環境の問題には、受け入れの問題もあると思います。資格を持っているデフの方たちが、きちんと受け入れられていると思いますか?

小島:プログラミングに興味があるという聴覚障がい者は、まだ少ないんじゃないかなと思います。
何が面白いかとか、まだまだ知られていません。だから、興味を持つ聴覚障がい者が限られているというのが現状だと思います。

――――小島さんは、初対面の私とコミュニケーションがしっかり取れています。小島さんより障がいが重い方でも、エンジニアの仕事が向いていると思いますか?

小島:そうですね。大学時代、私より聴こえが悪い人がいましたが、その人の方がプログラミングの能力が高かったです。
大学の課題を10分位で終わらせるなど、エリートというか、「宇宙人か?」と思う位の人でした。

――――その方は、現在何をなさっているのですか?

小島:大手企業で技術系の仕事をしています。聴覚障がいの有無に関係なく、凄い人は凄いです。

――2020年には、東京オリンピックの後にパラリンピックも開催されます。デフスポーツとは異なりますが、関心の高まりから、デフスポーツにも影響があるかもしれません。何かエンジニアとして貢献したいというお気持ちはありますか?

小島:実現は難しいですけど、話している内容が文字化される機械ができたら、凄く嬉しいですね。聴覚障がいに限らず、結構ニーズがあるのではないかなと思います。

そして、未来に叶えたいこと

――――それでは最後に、この記事を読む聴覚障がい者の方達へ、メッセージをお願いします。

有馬:周りの友人を見ていて、聴覚障がい者は、聴こえないということ以外、能力は何も変わらないと思っています。
もっとパフォーマンスを発揮できるはずなのに、能力を発揮できていない人が多いです。
どんどんチャレンジして欲しいと思いますし、チャレンジしたいデフエンジニアの方達がいたら積極的にコンタクトを取っていきたいと思います。
世の中のデフに対する認識、価値を変えていくこと、これが目指すところです。
自分たちの力でデフに対する価値を変えていきたいという人がいたら、是非一緒に事業をさせて頂きたいなと思います。それが一番の願いです。

小島:一歩踏み出せない方が多いですが、それは環境の影響もあるかもしれません。
ただ働いているだけのように見える人もいます。仕事は何十年もやっていくことですから、合わずに辞めていく人も多いです。
だからこそ、興味があることや、本当にやりたいことを見つけるのが大事だと思います。それがエンジニアだとしたら、歓迎したいです。
また、エンジニアに限らず、聴覚障がい者に対して言えることは、仕事においてコミュニケーションは欠かせないということです。
それが原因で仕事が嫌になることもあるけれど、それはただ単に相手が知らないだけという風に受け止めた方がいいですし、そこまで深く考える必要はないと思います。
いかに理解してもらうかという感覚でやった方が面白いんじゃないかと思いますね。

interview

世の中の環境が整い、聴覚障がい者がエンジニアの世界を知る機会が増えれば、デフITエンジニアの数は増大し、その秘めた能力を開花させることになるだろう。
その日の到来に向け、彼らをサポートする有馬の活動は、大きな意義を持つCSRであり、現職にある小島の更なる活躍には、今後も注目が集まる。

3ページ(全3ページ中)