連載企画 > 特別編 第2回
連載企画「ITエンジニアの君たちはどう生きるか」
特別編 第2回 デフエンジニアからみる世界、そして未来に叶えたいこと

2019年4月12日

聴覚障がいを持つITエンジニア、「デフITエンジニア」の生き方を紹介する本連載。
第2回目の今回は、雇用機会、会社側の受け入れ体制など、聴覚障がい者を取り巻く環境について、C4C所属のデフITエンジニア、小島皓治に尋ねた。
なお、今回と次回の最終回では、C4Cデフエンジニアリングサービス事業部マネージャーの有馬哲平も同席。
聴覚障がい者の雇用機会と同社のサポートについて、コメントしてもらった。

デフエンジニアを取り巻く環境

――エンジニアになりたい聴覚障がい者は少ないとのことですが、なれるかどうかという問題もあるかと思います。

小島:まず、「なりたいと思うようになる」環境があまりないというのが、一番大きいかなと思います。
理系に進んだとしても、まず先生の言っていることがわからない。
筑波技術大学は、聴覚障がいについて理解があるので、先生がひとつひとつ丁寧に、ゆっくり喋ってくれました。
逆に考えると、一般の他の環境の中でエンジニアになるのは難しい。
聴覚障がいについての理解、知識の差が影響してくると思います。

――――環境の問題には、受け入れの問題もあると思います。資格を持っているデフの方たちが、きちんと受け入れられていると思いますか?

小島:受け入れている会社もあるかもしれないですが、仮に同じ技術を持った健聴者と聴覚障がい者とだったら、健聴者が多く採用されていると思います。
エンジニアに限らず、辛い思いをしている人がいます。やはり、コミュニケーションの問題があると思います。
入社しても、人間関係などが難しくて辞める人が結構多いです。
私の友達にもいるのですが、聴覚障がい者はコミュニケーションが取れないと思われて、うつ病になりやすい。
環境が悪いこともあれば、自分が積極的にコミュニケーションを取っていないこともあると思います。
もし、相手が聴覚障がいについての理解があったならば、私の友達は変わったかもしれません。
お互いのあるべき姿がマッチすれば、双方にとって働きやすい環境になるのではないかと思います。
聴覚障がい者は、できないのではなく苦手なだけであって、紙に書いたり、ゆっくり話したりしてもらえれば、コミュニケーションが取れます。

――――有馬さんは、採用の問題について、どのようにお考えでしょうか?

有馬:持っている技術が同じであれば、コミュニケーションを取りやすい健聴者を採用するということは、あると思います。
また、単価が安くなってしまうということもあります。
私の周りには聴覚障がい者の友人や知人が多いので、労働環境の話を数多く聞いてきましたが、会社側が「できそうだな」と判断した仕事しか与えられないことが多いです。
ITに限りませんが、スキルを積み上げていくような仕事をできている聾者の数は少ないので、なかなか豊かになっていく道がない。

interview

――――スキルについては、どうお考えですか?

有馬:エンジニアの技術に関しては、健聴者と聴覚障がい者に差はないと思います。
技術そのものの評価に、聴覚は関係ない。
技術を伸ばすこと自体は、本人の努力次第なので、その環境をどれだけ提供してサポートしていけるのか、ここが一番大事になってくるのかなと思っています。
デフエンジニアが現場に出る以前に、社内で技術を学ぶことができる環境の整備、そうしたことにも取り組んで行きたいです。

小島:世の中には差別的な見方があるわけですが、それが悔しいというか、聴覚障がいについての理解が広がっていないと感じます。
そこを壊したいですね。聴覚障がい者と健聴者の差はあまりないということを、世に広めて行きたいです。

環境の整備は、健聴者側、とりわけ企業側に問われる課題である。法令遵守目的での障がい者雇用という、数の問題だけではなく、環境整備と理解の拡大は、企業に課せられた社会的責任の一環と言えるだろう。
次回、本連載の最終回では、デフITエンジニアの可能性と未来について、小島と有馬にそれぞれの想いを述べてもらう。

2ページ(全3ページ中)