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連載企画「ITエンジニアの君たちはどう生きるか」

第1回 フリーランスと勤め人と、あなたはどっち?

2018年1月18日

2017年のソニー生命の調査によると、男子中学生の「将来なりたい職業ランキング」でプロスポーツ選手などを抑え、「ITエンジニア・プログラマー」が1位に輝きました。

ピアノ、水泳などの教室に並び、プログラミングは子供が習う人気の習い事になりつつあります。
ITエンジニアを目指す学生や、なりたての人も少なくないでしょう。

しかし、最初のデジタルコンピュータが世に出てきてわずか70年程度。ITエンジニアはまだ若い職業なのです。

スキルはどう積んでいけばいいのか?年を取った後のキャリアは?疑問は尽きません。

そこで、エンジニア40人を擁するITシステム開発企業、C4Cが5回連載で、エンジニアとしてどう生きるかのヒントを考えてみました。

エンジニアと言えば、他のホワイトワーカーと比べフリーランスで働いている人が多い印象があります。
第1回は、ITバブルやリーマンショックの荒波に立ち向かい、26歳にして起業するなど15年以上IT業界の最前線に立ち続けてきたC4C社長、亀山強氏に、ITエンジニアのフリーランスと勤め人の違い、そしてこれからを聞きました。

フリーランスが増えているのは『今』限定?

――――組織に属さず、フリーランスの働き方を取るITエンジニアが増えています。なぜでしょうか?


一般的にこれまで社員、特に大企業の正社員は企業年金もちゃんと支払われ、退職後の生活の保障もされていた。
でも、人口推移や国内の財政問題で年金の支払いは今後、追い付かなくなる可能性がある。

企業の平均寿命も短くなり、ベンチャーが10年で大手を倒すような時代だ。


一企業で一生勤めあげる働き方はそれほど一般的でなくなっている。


一方、IT業界は空前の売り手市場で、大手一流企業からフリーランスに転身したエンジニアの給料が倍以上に増えたという例はざらにある。


また、「世界のどこでも働ける」といった自由なイメージにあこがれる人は少なくない。

――――会社組織に属する働き方にも良さがありますよね?

フリーランスが増えたと言っても、それはIT業界が売り手市場である「今」限定ではないかと感じることもある。

5年経ってもし売り手より企業側の立場が強くなったら、組織で正社員として働くメリットが増すだろう。

今でも、大企業と雇用契約を結ぶ安心感を重視する人も多い。

interview

組織から受けられる恩恵をお金に変換している

――――フリーランスはいいことだけではない?


まず、会社組織の中でなら使えるリソースを活用できない。


たとえば、ソフト開発なら会社が所有しているパッケージソフトを利用できるとか、営業の人員を活用できるといった点だ。


「フリーランスである」ということに自信を持ちすぎ、いわば「スレ」てしまったエンジニアも実は少なくない。


経営者の集まりに行くと、「フリーランスはお金のことばかり契約条件で要求してくる人が多い」という愚痴がよく出る。


若くやる気にあふれている時期はそれでもいい。


しかし、体力的にも技術的にもピークは必ず過ぎ去り、生産性は落ちていく。


それに代わる何かをあらかじめ学んでおかなければいけないのに、フリーランスが学べる場は誰も用意してくれない。


会社にいれば、研修会や新しい職場などでスキルを磨ける。

しかし、フリーランスにあえてそういう場を用意する企業は少ない。あくまで自分で率先して学んでいかなくてはいけない。


さらに、ITエンジニアは営業職などと違い、一人でパソコンに向かう孤独な作業だ。

会社員と違って組織の中で評価されることも少ない。

組織に属さない孤独にも耐えなくてはいけない。

これら組織から受けられる恩恵をいわば、お金に変換しているのがフリーランス。

収入もいいが、その分デメリットも大きい。

フリーランスと勤め人、中間的な生き方だってある

――――ITエンジニアはどちらかを選ばなくてはいけないのでしょうか

最近はフリーランスと勤め人、両者の「いいとこどり」をした中間的な働き方も出てきている。

例えばうちでは、個人契約のフリーランスと社員、合わせて40人のエンジニアが契約企業に出向してもらう働き方をとっている。

単に仲介手数料を取るだけでなく、皆にエンジニアとしての研修や勉強会などを通じ、個々の経験値を高めている。


さらに技術的なものだけなく、エンジニアが疎い資産投資についてレクチャーしたこともある。

フリーランスでも組織に属するメリット、喜びを感じられるような働き方が今後、求められるのではないか。